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留学や勉強の備忘録

【海外PhD受験の傾向と対策】徹底戦略で掴んだ米国博士課程への切符(前半)#1

 や受験の定番フレーズとなった傾向と対策というフレーズ。実はこれには明確な起源があって、1949年刊行・旺文社の大学受験参考書「傾向と対策」がきっかけで広まったのだそうです。かくいう私も受験生の頃はその愛読者であっただけでなく、学部時代には赤本の作成に携わるなど、傾向と対策は常に私のそばにありました。

受験生が問題の外観を掴むのに重宝する傾向と対策。こういうマニュアルが海外大学受験にもあればいいのに…!そう切望していた受験期の気持ちを反映したのがこの記事のタイトルです。

兎にも角にも、海外大学院受験においてはただでさえ複雑な受験システムを英語で理解し、現地学生でも苦労するプロセスを自力で乗り切らないといけません。そこで将来の受験生が海外サイトと睨めっこする時間を少しでも減らせればと思い、こちらに自分の経験をまとめます。

 

プロフィール: 海外受験までの道のり

私は今年の9月からカリフォルニア工科大学の博士課程に進学する予定なのですが、海外大学院受験を本気で決心したのは修士2年の夏ごろでした。もともと海外に対してぼんやりとした興味は抱いていたものの、博士はこのまま同じ大学に進学して、ポスドクででも留学できたらな〜と考えていた程度です。最終的に海外を選んだ理由はのちほど書くとして、留学を決めた時点での残り準備期間は約5ヶ月。マルチタスクが得意でない私は受験準備を修論執筆や論文投稿と同時並行できる気がせず、結局1年目は1校に絞って受験しました。ここで1年目と書いた通り、結果から先に申し上げると、私はギャップイヤーを経て再受験でリベンジを果たすことになるのですが、これについては次の項目で見ていけたらと思います。

なお、私は大学では深海熱水活動域に生息する細菌の生理生態に関する研究に取り組んでいました。もし興味の近い方がいらっしゃれば、ホームページを参照していただけたらと思います。

受験結果

最終的な受験結果は、1年目は1校専願で不合格、2年目は以下の計10校に出願し最終的に6校合格となりました。この出願数はおそらく平均的で、周囲の現地学生は2~8校程度に出願している人がほとんどでした。留学生の場合は10~15校出願することも少なくないようです。

大学 (プログラム) 合否 事前コンタクト 面接 経済的保証
California Institute of Technology メール
Massachusetts Institute of Technology zoom/ラボ訪問

なし、Wait List

MIT-WHOI Joint Program

zoom

なし
Northwestern University zoom

University of Southern California zoom
University of Wisconsin-Madison zoom
Michigan State University (EES) zoom なし
Michigan State University (BMS) zoom
University of Rhode Island zoom なし
Montana State University zoom なし

 

受験を通じて特に強く感じたのは、アメリカの博士課程受験は(日本よりも)指導教官とのマッチングやタイミングによる影響が大きい」ということでした。だからこそ、出願前に事前コンタクトを行って、研究内容や指導方針について確認しておくことはほぼ必須といえると思います。私は上記の大学を含めて10回以上はオンラインミーティングを行いましたが、先生方が学生のリクルートに本気かどうかは一度話すだけでも分かるものです。

 

また、後ほども触れますが、プログラムもしくは指導教官の懐事情というのも当然重要になってきます。アメリカの博士課程は多くの場合”Stipend”という形で学生に給与が支払われるので、指導教官のファンドの有無が学生の採用状況に直結してきます。なお私の1年目の受験時に障壁となったのもやはり経済面でした。

(1年目に出願した大学は再受験しませんでしたが、入試担当のM先生には大変親身にアドバイスをいただきました。本当にありがとうございました。)

受験タイムラインと出願時の経歴

次に私の受験タイムラインをご紹介します。秋入学の海外大学院受験を考えている皆様は、これくらいを限度になるべく早めに取りかかればいいんだな~という程度に眺めていただけたらと思います。

7月まで TOEFL勉強、研究室探し

8月 TOEFL目標スコア取得、研究室コンタクトとりはじめる

9月 出願書類準備開始

10月 奨学金応募

11月 推薦状依頼

12月 出願校確定

上記は2年目のタイムラインですが、特に手間取ったのが受験校選びとTOEFLのスコアメイクでしょうか。1年目から受験校を大幅に増やしたことに伴って必要なTOEFLのスコアも上がり、結局スコアメイクに一夏を費やしてしまいました。

 

以下は出願時の最終経歴です。海外受験コミュニティの中では決して目立つような経歴ではありませんが、これまでの研究成果を目に見える形で発表できていたのは良かった点です。

・研究留学の経験なし(TOEFL103)
・出願時点で獲得奨学金なし
・学部のGPA…3.5/4.0、修士3.9/4.0
・論文…主著2本、共著1本
・学会発表…国際学会2件、国内学会4件、
GREなし

出願先決め

CVの作成

続いて出願先の決定についてです。CVは先生へのコンタクトの時点で必要となるので、まず真っ先に準備すると良いと思います。私はXPLANEさんの記事を参考にOverleafで作成しました。CVで画像検索とすると色々カラフルなテンプレートが出てきますが、アメリカではシンプルなものがスタンダードです。

以下、ささやかながら気をつけた点です。

・シンプルながらも、アピールしたい業績は太字・下線などで目立たせる
・研究経験はできるだけ具体的に書く一方で、分野外の先生にも伝わるようにする

CVを探していると論文や受賞歴、インターン経験が山のようにある先輩方に出会うと思いますが、そこまで気にしなくて大丈夫です。目に見える成果はもちろんプラスにはたらきますが、志望理由書や推薦状で十分にカバーできると個人的には思っています。

研究室探し、コンタクト

研究室探しにあたって作成したリスト

海外大学院受験で最も苦労するポイントのひとつが研究室探しだと思います。私は日本の研究者の方々にアメリカの研究室情報を教えてもらったり、興味のある論文の著者を自分で調べたりして、最終的に約30名の先生にメールを送りました。直接面識のある方はいらっしゃいませんでしたが、どなたも指導教官からたどっていって1~2人経由すれば知り合いかな、くらいの距離感の先生方です。結果、約半数からは返事をいただき、10名の先生方にはミーティングの機会を設けていただきました。

探すうえでの確認項目

研究プロジェクトや論文の内容は言わずもがなですが、以下の項目も参考までに確認するようにしていました。

・研究面:研究室からここ数年論文が出ているか?学生が主著のものはあるか?過去に博士課程の卒業生は何人くらいいるか?ポスドクや学生の人数は?

・資金面:所属プログラムはフルファンドを保証しているか?

・その他:TA要件や授業要件は?ラボローテーションはあるか?5年間暮らせそうな環境か?

なかなか候補先が見つからなくて焦り始めるとメール乱れ打ちしたくもなりましたが、後々困るのは自分なのでしっかりこだわって探しました。

問い合わせメールをする上で(実例)

大学の先生方はとにかく忙しく、大御所の先生でなくても一日数十件の問い合わせメールが世界中の学生から飛んでくると聞きます。その中で注目してもらうためには「この学生は本気で自分の研究に興味を持って連絡してきている」と感じてもらうことが重要です。

よって問い合わせの際には、

・「研究室に興味を持った理由(論文)、論文の感想や疑問点、今後研究したいこと、あればアイデアを含める
・自己紹介は簡潔に(CVを添付するので大丈夫)

を意識して作成しました。ちなみに実際に送った問い合わせメールがこちら。

Hello Prof. (NAME),

I hope this finds you well. I’m (NAME) and contacting you because I was very impressed with your research on XXX and thought your lab theme fits what I would like to learn in my Ph.D. program. For example, your papers on XXX made me want to study more about (Your idea), especially (Your idea).

I am looking for a Ph.D. program starting in Fall 2024, and I was wondering if you are recruiting new students this year. I completed my master’s degree in deep-sea microbial ecophysiology this March. Through my Ph.D. studies, I am eager to acquire the skills needed for multi-disciplinary research to combine XXX.

I have attached my CV for your consideration. I am looking forward to hearing from you!

Best regards, (NAME)

 

返信がなかった場合、1週間を目処にリマインドしました。英語のメール作成については以下の本も参考になります。

もし好意的な返信をいただけたら、ダメ元でいいのでオンラインミーティングの機会をいただけないか聞くことをおすすめします。返事をいただけてる時点でチャンスなので、この機を逃すともったいないです。私は一度目は返事が来たのに、期間をあけて二回目以降連絡したら返信が来なくなったことも度々ありました。

参考

問い合わせの極意についてはMartin Chalfie先生(2008年ノーベル化学賞)の動画がおすすめです。

ミーティング

オンラインミーティングではお互いの自己紹介・研究紹介のあと質問タイムに入るパターンが多いのですが、中には「Good Morning!さぁなんでも質問してくれ!」から始まるパターンもあって面食らいました。いずれの場合にせよ、ミーティング時間は30分~1時間程度と限られているので、ミーティングまでに以下の項目についてしっかり準備しておくと安心です。

・自己紹介と研究紹介
・自分の研究プレゼン
・プレゼンに対する予想質問への回答
・質問リスト(学生取る予定か、プロジェクト、資金、卒業生の進路、プログラムの特色など)

研究プレゼンは相手から要求されたことはありませんが、少しでも覚えてもらうためにほぼ毎回自主的にやっていました。個人的には、研究プレゼンはアピールに非常に効果的で、このおかげで良い印象をもっていただけた先生も多いと感じています。また、プレゼンはちゃんと事前に準備できるので、ミーティング中の英語が多少ダメでも、「あ、この学生は研究のことならちゃんと喋れるんやなと挽回のチャンスが得られる点も留学生にとっては強みかなと思います。

ちなみに私は「なにか質問ある?」と聞いてきてくださったタイミングで、「もしまだお時間あるなら、5分程度のプレゼン用意したんですけど聞いてもらえませんか?」といってねじこんでいました。

 

質問リストの内容についてこちらの記事を参考にしていただければと思いますが、経済支援については必ず確認するようにしましょう。特に、授業料の支払い有無や、卒業までの期間をカバーする分の資金があるか、資金の出どころ(プログラムからなのか、指導教官の研究費からなのか、TA・RAとして働くことで払われるのか…)ついての確認は必須です。

いきなりお金のことを聞くのは失礼では…と考える人もいるかもしれませんが、心配は御無用です。私がお話しした先生方も、「アメリカの博士課程では経済支援の確保が必須やから、そういうの聞いていいんやで~」とおっしゃっていました。

奨学金応募

私は1年目は中島記念国際交流財団船井情報科学振興財団本庄国際奨学財団、2年目は船井とJASSO奨学金に応募しました。応募可能な奨学金はもっとたくさんあったのですが、月額奨学金・支給年数・授業料サポートの有無などを総合的に考慮して選択しました。奨学金探しは以下のサイトが参考になります。

応募書類の準備には時間がかかりますが、本番の出願書類準備の下地となるので決して無駄にはなりません。また奨学金は分野によって相性もあるので、落ちたからと言って必要以上に気にすることもないと思います。

ここで奨学金応募に関して2点やっちまったと思ったことがあったのでご紹介します。

既卒は格段に応募できる奨学金が減ること

当然ですが、多くの奨学財団は「応募時点で大学・大学院に在籍している者」を募集対象としているので、既卒の人は要件を満たさないこととなります。よって、ギャップイヤーなどを考えている方は、応募できる奨学金が少なくなるということには注意しておいたほうがよいかもしれません。

 

学内締切が早めに設定されている場合があること

私は奨学財団の公式サイトだけをチェックしていたため、大学に学内締切があることに気づかなかった…というパターンがありました。所属大学の留学ページも定期的にチェックしておくのが吉です。

長くなってしまったので、出願準備についてはこちらの記事でご紹介します🐾