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留学や勉強の備忘録

【海外PhD受験の傾向と対策】徹底戦略で掴んだ米国博士課程への切符(後半)#2

こちらの記事は海外PhD受験の傾向と対策記事の後半です。

前半はこちら↓

straycat-tabi.hatenablog.com

いざ、出願準備

まずは出願アカウントを作ろう

多くの大学では、GradCASやApplyWebなどのオンラインシステムを利用して出願を行います。システム上では事前に必要な書類や要件の確認を行うことができるので、提出直前ではなく、できるだけ早めにアカウントを登録するといいと思います。ホームページには書いていなかったSOPの字数制限やCVの枚数制限がシステム上にだけ書いてあった…なんて事もあったので、早めに登録して損はありません。

必要書類

私が出願にあたって準備した書類は以下のとおりです。

・Statement of Purpose

・推薦状

・成績表

・英語スコア

・CV

・その他ステートメント

(Background Statement, Diversity Statement, Writing Sample)

 

各書類の作成にあたって気をつけた点を以下で説明します。

Statement of Purpose (SOP)

SOPはいわゆる志望理由書のことで、大学によってはStatement of ObjectivesやPersonal Statementとも呼ばれたりします。 詳細はXPLANEさんのサイトを参照していただけるとよいと思いますが、多くの場合は大学側から「こういうことを書いてね~」と指示されるので、その内容にそって書くといいでしょう。例えば、MITでは以下のようなStatement of Objectivesを要求されました。(これもアカウントを作ると見ることができます)

Please explain why you are a good candidate for the MIT-WHOI Joint Program in the field you have chosen. You should describe why you wish to attend graduate school, what you would like to study, and any research or work experience you have. Describe how your lived experiences have shaped and guided your approach to study and research. This is a good place to mention research areas of specific faculty that most interest you. The Admissions Committee will welcome any factors you wish to bring to its attention concerning your academic and work experience to date

とは言っても最初はどのように書いたらいいのかイメージが沸かないと思うので、まずはSOPのサンプルをいくつか読んで、お気に入りをみつけることをおすすめします。自分だったらこの部分にこういうことを書くな~とイメージしながら読むといいかもしれません。

以下に私がお世話になったSOPの例をいくつかご紹介します。特に1つ目のサイトは、SOPの構成や目的などをわかりやすく説明してくれているので重宝しました。

なんとなくイメージが湧いたら、(1) CVを元にアピールしたい内容を厳選して (2)アウトラインを作成し (3)プログラムにマッチするように内容を調整する といった手順で作成しました。各校ごとに内容を微調整するのはかなり大変だと思いますが、マッチングこそがキモなので、全大学に当てはまるような当たり障りない内容は極力書かないようにすると良いと思います。書き上げたらできるだけたくさんの人に添削してもらってください。

私のSOPはこちらの記事で公開しているので、参考にしていただければ幸いです。

推薦状2-3通

推薦状は研究室の指導教官2名と共同研究者の方1名に書いていただきました。当然ですが、受験において「誰にどんな推薦状を書いてもらうか」というのは極めて重要です。私は、推薦状執筆の際に参考になりそうな業績・エピソードリストを準備して、CVとともに共有したりもしました。私は主な研究経験は学部・修士の研究プロジェクトのみだったのですが、違う視点から見た複数のエピソード(実験、論文執筆、学会発表など違う場面での出来事)を準備し、リストに加えました。

ちなみに推薦状の内容は大学ごとにアレンジしたりはせず、基本的に同じ内容のものを提出していただいたはずです。

 

Diversity statement, Background statement, Writing sample

Statement of Purposeが研究面に基づいた書類であるのに対し、これらの追加Statementはより幅広い、時に個人的なモチベーションを記述するためのStatementになります。応募者の境遇や人生経験など、Statement of Purpose には書ききれなかった自分のアピールポイントを売り込むことができます。以下、それぞれのStatementについて簡単に説明します。

Diversity statement

このステートメントでは、多様性、教育機会平等などに対する自分の考え、これまでの経験、今後の目標などについて記載します。ここで重要なのは、自分がマイノリティとして不遇な環境下にあったという事実をメインで書くのではなく、そこで得た学びやアイデアをもとにどう行動したか、今後どう還元していくつもりかを書くことだと思います。

例えば、

  • 母子家庭出身で経済的に苦労したが、努力で奨学金を勝ち取って諦めないことの重要性を学んだ

という事実だけのエピソードよりも、

  • 〇〇分野は日本では学習機会が少なかったので、〇〇大学の先生方と協力して教育プログラムを立ち上げた。〇〇大学では学生支援プログラムの□□に興味があって、~~の面で貢献したい

といった波及的な効果を示す具体例のほうが読み手もイメージが湧くと思います。そんなたくさんエピソードないよ~と思う方でも、日本出身の留学生という点で、現地の学生とはまた違った視点で進学や教育機会に関する議論ができるはずです。私はWashingtong Postのニュース記事を参考に書き方を勉強しました。

また、各大学ごとのInclusion and Diversityに関するポリシーを理解しておくことも手助けになると思います。

Background Statement

Diversity Statementと内容的に重複することもありますが、より幅広いトピックについて自由に記述できます。以下のMichigan State University の例がわかりやすいでしょうか。

In this statement, please discuss your motivation for pursuing a graduate degree. Describe what inspires you, and any challenges or obstacles you have faced in your life, including any that have had an impact on your education, and how you have overcome those challenges. This statement is intended to help us learn more about you as a person, and is not the same thing as the Statement of Purpose, which should focus more specifically on your research interests and career goals.

私はこれまでのフィールドワーク経験(研究航海)、ティーチングアシスタント、研究面での後輩指導などについて書きましたが、いずれの場合も失敗や困難を乗り越えた経験から、どういう価値観・教訓を得てそれをどう活かし、今後どのように大学コミュニティに貢献できるかを伝えることを意識しました。また、学びに対する価値観はどういうものなのか(例. 一つの分野を突き詰めたいのか、Interdisciplinaryな研究力を得たいのか、全く新規な分野を開拓したいのか…)という点にも触れました。

Writing Sample

 こちらはStatementではありませんが、海外大学院受験におけるWriting Sampleの情報が日本語で見つけられなかったので、参考までに自分のケースを書き残しておきます。

 

私は修士論文の抜粋にカバーレターを付けて提出しました。カバーレターは要求はされていませんでしたが、読む前に概要を把握できたほうが親切かと思い勝手につけました(私の実際に提出したレターはこちら)。ページ数は5ページくらいが妥当かと思いますが、私は「こんなに書けるんやで!!」とアピールしたかったので傲慢にも50ページのものを出しました。きっと誰も読んでないでしょう。

 

卒論・修論の内容が未発表データを含む場合、取り扱いには注意してください。公開済みの学会アブストラクトなんかも代わりに使えるかもしれません。

英語のスコア

私は出願校の基準点に合わせてTOEFL100点以上を目標に勉強しました。結果はギリギリ最低ライン通過の103点で、合否に響くのではないかと心配しましたが、受験してみた個人的な印象としては、英語のスコアはあくまで要件であり、むしろ面接できちんと話せるかのほうが重要になってくるのではないかという風にかんじました。ただこれはあくまで私の感想です。

なお、大学院によってはスピーキングなどの各項目ごとの最低点数や、ティーチングアシスタントとして働く場合の基準点を設けている場合があるので注意しましょう。私はスピーキングの点数が足りないことに気づき、ラトガース大学への出願を断念しました。ちなみに、IELTSではなくTOEFLを選んだのは完全に好みの問題です。

TOEFLは2023年7月から問題形式が変わったので、受験する方は問題集が新形式対応かどうか確認必須です

成績表

私のもう一つの懸念は学部のGPAが3.5しかないことでした。実際、面接の際にも成績について指摘されたのですが、私の場合は

  • 苦手を克服したい分野を一般教養科目として多く履修したことが成績に影響していること
  • 専門科目は好成績を保っていること
  • 成績を修士で挽回したこと

の3点を言い訳にしました。受験において、欠点は何かを乗り越えた力として読み替えることができるので、変えられない成績を嘆くよりは克服した経験として活かすほうがいいと判断したためです。また専門科目だけの成績を開示する必要がある大学もあるので、計算しておくといいかもしれません。

なお、出願時点ではデータでの成績表提出を受け付けている大学も多いですが、中には所属大学からの直接郵送しか受け付けないところや、成績評価機関(WESなど)を経由しなければならない大学もあるので事前に確認しておくといいと思います。実際、私はWESでの成績評価に1ヶ月かかった(11/3依頼→12/5評価完了)ので、余裕を持って申請することを強くおすすめします。ちなみに、成績評価機関を通すと成績が上がることもあるようですが、私の場合は変化なしでした。

WESの利用方法についてはこちらのサイトが非常にわかりやすく解説してくださっています:

GRE

GREは要件になかったので受験しませんでした。TOEFLよりも試験の開催日が少ないはずなので、早めに確認しておくと良いと思います。

面接対策

概要

私は合計5校から面接に呼んでいただいたのですが、4校はzoomで、1校はキャンパスビジットと兼ねた現地面接でした。面接日のスケジュールはプログラムの概要紹介→教授またはポスドク4人と面接(各30分程度)→現学生との交流(Q&A)という流れが多く、9-17時までかかることもザラでした。厳しい面接はほとんどなく、多くの先生方は学生と話すのを楽しんでいる印象だったので、必要以上に怖がらなくていいと思います。

 

私は英語に自信がなかったので、とにかく徹底対策で臨みました。具体的には、50ページ以上に及ぶ予想質問&回答集をつくり、どんな質問が来ても臨機応変に答えられるようにしました。面接の質問についてはこちらの記事にまとめています。

 

さらに、「テンパって英語聞き逃したらどうしよう…」という不安対策として、zoom用のノートパソコン+モニターの2台体制で臨み、モニターには翻訳アプリ・リアルタイム文字起こし・カンペの3つを待機させていました。使う余裕はほぼありませんでしたが安心材料にはなりました。

面接フォローアップ

私は第一志望の面接のあと、ダメ押しとして自分の論文をメールで送りました。「面接ありがとうございました。ご参考までに、さっきお話した自分の研究、こんなかんじでまとめてます」てな感じです。

正直このフォローアップに意味があるかと言われると微妙ですが、しないよりはする後悔かなと判断しました。

合格発表

合格発表は、メールか電話がほとんどでした。2月ごろに、なんか海外から電話かかってきた!?ってことがあれば合格通知かもしれません。

合否がでたのは最短で出願締切から10日後の1月11日、最長で4月16日でした(April 15の結果開示期限をすぎてましたが…)。長いところでは、出願からほぼ半年待ったことになります。本当に長期戦です。

また、あえてリンクしか貼りませんが、こちらのサイトリアルタイムで大学院の合否通知状況を確認することができる有名なサイトです。上手く使えば、合格者のGPAや面接の有無などの情報を得られますが、私のように豆腐メンタルの人は、志望校の合否はまだかまだかと一日中ネットに張り付く羽目になるので、知らないほうが幸せかもしれません(笑) ご参考までに!

キャンパスビジット

私は最終的に4校のキャンパスビジットに参加しました。そろそろ長文に疲れてきたころだと思うので、Q&A形式で簡単にまとめます。

Q. キャンパスビジットって何するの?

A. ビジットは大体2、3日かけて行われ、プログラム紹介、先生とのミーティング、ラボツアー、学生の研究発表、Q&Aセッションなどが行われます。特にCaltechのキャンパスビジットではNASA見学や寮見学、教員のバンドライブなど、他にはないイベントが盛りだくさんで、Bigbang Theoryの雰囲気を感じました。

(補足)これまでの受験プロセスでは主に学生が自分を売り込むのがメインだったのに対して、キャンパスビジットは大学・教員側が学生をリクルートし、そして双方が研究方針・相性などのマッチングを確認する機会だと捉えることができます。

Q. 交通費、宿泊費、宿代は出るの?

A. 基本大学側の負担でした。ただし、交通費は上限があるところが多く(国際線500ドルまでなど)、残りは自己負担です。それでも迷っているなら行く価値はあると思います。

Q. 現時点で志望度が低い大学でもビジットしていいものなの?

A. 問題ありません。多くの人が複数校のビジットに参加します。私の周りで一番多い人は6校行ってました。

Q. 用意すべきものはある?

A. とにかく質問の機会がたくさんあるので、質問リストを準備していくといいと思います。

出願を終えたら

  • 進学先を決めかねている場合、ラボの学生と直接話してみるのがおすすめです。学生視点から見た研究環境やコースワークレベル、Qualification Exam(大事!)など、生の声を聞くことができます。また、ビジットに行けなかった場合、住環境についても聞いておくといいと思います。
  • 渡米前の6~8月に海外でインターンをしたい場合、1月や2月の締切が多いので、頭の片隅に置いておくといいかもしれません。

最後に

ここまで長々と書きましたが、日本であろうと海外であろうと、きちんと対策すれば実力相応の大学院には食い込めると思います。ただ、日本のように実力さえあれば必ず受かるというわけではなく、先生の資金事情や研究室の席の空き具合、募集しているプロジェクトなど、よりマッチングの要素が強く影響します。なので縁があったら受かるし、落ちても実力不足というわけではないという風に考えれば、少し気楽かなと思います。応援しています!

 

おまけの記事はこちら🐾(ギャップイヤー、海外を志したきっかけ、受験費用)